第29回 精子の質は”口にするモノ”で変わる?【最新研究でわかった2つの食事と精子の質】
皆さんこんにちは。
培養室の川島です。
今年の夏も長く暑かったですね。
私は春と秋が好きなのですが、最近はどちらの季節も短くなってきて残念な気持ちです。
さて、今回は“食事”が精子に与える「良い影響」と「悪い影響」を調べた最新の研究を2つ紹介させていただきます。
1. 超加工食品(UPF)と精子濃度の関係
2024年、イタリアの健康な若年男性(平均年齢約20歳、n=126)を対象にした横断研究です。
Consumption of Ultra‑Processed Foods and Semen Quality in Healthy Young Men Living in Italy (2024)
この研究によるとUPF(ソフトドリンク、加工肉、スナック等)の摂取量が多いほど、精子濃度が有意に低下することが示されています。

結果
- 摂取量が最も多いQ4群では、最も低いQ1群と比較して精子濃度が平均で約 −54.16×10⁶ 個/mL(95 % CI:−92.91〜−15.40)と有意に減少(p = 0.002)。
- Q4群とQ1群で進行性運動性も約 −14.17%(95 % CI:−28.25〜−0.09)(p = 0.036)と有意に減少。
- 正常形態精子については減少傾向あるが、統計的有意差には至りませんでした(β=−2.93%、p = 0.071)。
結論:UPF摂取が多いと、精子濃度と運動性が低下する可能性があり、妊活中の方は注意が必要です。
2. 地中海式食事と精子の質:統計的レビューより
2024年に発表された地中海式食事と精子品質に関して、10の研究をまとめたレビューです。
Influence of the Mediterranean diet on seminal quality—a systematic review(2024)
このレビューでは野菜・果物・ナッツ・魚を中心とする地中海式食事をよく遵守する男性は、精子の質が向上することが示されています。

結果
- 10研究中6つで、精子濃度・運動性・形態などが有意に改善されたと報告。
- 他2研究では有意差なし、残り2つでは一部成分(抗酸化物質やくるみなど)が良い影響を示唆されました。
- より新しいメタ分析(2025年まで含む11論文、n≈2,558)では、精子濃度・総数・運動性・形態すべてにおいて有意な改善が確認されました。
どうして精子に良い働きがあるのか?(背景メカニズム)
- 地中海式食事はオメガ‑3脂肪酸や抗酸化物質に富み、炎症や酸化ストレスを抑制し、精子の細胞膜構造やDNA状態を改善する可能性があります
結論:野菜・果物・ナッツ・魚を中心とする食事はUPFとは逆に精子にとってプラスに働く可能性があります。
まとめ
・UPFの摂取は精子にマイナスに作用:加工食品や甘味飲料を減らし、未加工中心の食事を増やしましょう。
・地中海式食事が精子にプラスに作用:鮮魚、オリーブオイル、ナッツ、野菜・果物を習慣的にとりましょう。
食事は体の健康を維持するだけでなく精子の健康を守るためにも重要です。
妊活中は特に美味しく手軽なUPFはなるべく控えた方が良いかもしれません。
たくさんの様々な食事が手に入る今だからこそ、目的に合わせた適切な食事を選択することが必要なのかもしれませんね。
