第31回 体外受精をしてみて初めてわかる不妊理由【受精障害】とは?
明けましておめでとうございます!
…から早くも1月も終わりを迎えて、お正月気分からすっかり日常生活に戻ってきた今日この頃ですね。
冬本番の寒く、空気が乾燥した日が続きインフルエンザも流行っています。
体調管理には気を付けていきましょう!
さて今回のコラムは、体外受精において稀に発生する受精障害についてお話してみようと思います。
受精障害とは?
受精障害とは、精子と卵子が出会っているのにもかかわらず受精という現象が起こらないことを意味します。
以前のコラム、“第9回 「受精と透明帯の役割について」”でもお話した、卵子と精子が受精に至るまでの過程のどこかで問題が起きてしまうと、この受精障害が発生してしまいます。
受精障害はおおよそ10%程度の頻度で発生するとされており、一度受精障害を認めた場合では次回以降の体外受精(精子をふりかける方法)でも再度受精障害となるリスクが約30~40%とかなり高いとされています。
またタイミング法やAIHなどの一般不妊治療においては受精障害であることを突きとめることは難しく、体外受精を受けて初めて判明する不妊原因となります。
せっかく採卵した卵が全く、もしくはほとんど受精していないという結果になるので患者様はもちろん、我々培養士としても非常に悔しいです。
考えられる原因は複数あるのですが、ここからは精子側と卵子側の問題に分けてそれぞれ解説していきたいと思います。
受精障害の原因
(精子側の原因)
①精液の濃度や運動性が低い、あるいは機能性に問題があると精子が透明帯を貫通して卵子の中に入ることができません。

②卵子を活性化する因子の放出不全。
卵子に侵入できても、その後に卵子を活性化させるのに必要な因子(PLCζ)を精子が放出できないと受精は起こりません。

(卵子側の原因)
③透明帯が硬かったり厚かったりの異常があり、精子が通過できない。

④卵子が未成熟である。
卵子が未熟である場合は卵子自体に受精する能力がなく、受精できません。

⑤卵子の活性化の異常
精子が卵子の内に侵入した後に卵子を活性化する因子(PLCζ)を放出するも活性化がおきない場合も受精は成立しません。

受精障害に対する治療法
このように様々な原因が考えられるわけですが、この受精障害に対する治療法としては以下の3つを挙げることができます。
- 顕微授精を施行する
精子が透明帯を通過できない場合には、顕微授精により確実に精子を卵子内に侵入させることが受精障害の解消に非常に有効です。
- 排卵誘発法を変える。
採卵で得られた卵子が未成熟であった場合には、次回以降の排卵誘発法を変えてみたり、誘発の最後に行う排卵刺激の方法を変えてみたりすることで成熟卵を得られる可能性が高くなります。
- 卵子の活性化処理
精子が卵子内に侵入しているにもかかわらず受精が起こらない場合には、卵子または精子の活性化が正常に機能していない可能性があります。このような場合にはカルシウムイオノフォアや電気刺激、ストロンチウムなどを用いた卵子の活性化を誘導する処理が有効となる場合があります。
最後に
このように、一言で受精障害といっても状況により原因や対処法は様々です。私たち培養士や医師はそれぞれの患者様に適した治療法を適切に判断し提供させていただきますので、患者様も心配な点や不安なことなどありましたら遠慮なく聞いていただけたらなと思います。
培養士 鈴木