【先進医療シリーズ④】着床率を上げる?SEET法(子宮内膜刺激術)とは?
最近は暖かい日も増え、春の訪れを感じる季節となりましたね。
さて、今回は先進医療シリーズ第4弾をお届けします。
体外受精を受けている方の中には、
・『良好胚を移植しているのに妊娠しない』
・『着床率を少しでも上げたい』
・『SEET法って効果があるの?』
とお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
今回のコラムでは、SEET法(子宮内膜刺激術)とは何か、SEET法な流れ、メリット・デメリットをお話します。
SEET法とは?(子宮内膜刺激術の仕組み)
SEET法(Stimulation Endometrium Embryo Transfer)は、凍結融解胚移植(FET)の前に、胚培養液を子宮内に注入して子宮内膜を刺激する方法です。
なぜ必要と考えられているのか
自然妊娠では、受精卵は卵管を移動しながら子宮へ向かいます。その間に、胚から分泌される物質が子宮内膜へシグナルを送り、着床しやすい環境が整えられると考えられています。
一方、体外受精では
・胚は体外で培養される
・子宮と胚の自然な「やりとり」が少なくなる
可能性があります。
そのため、SEET法では胚を培養していた培養液を移植前に事前に子宮内に注入することで、胚から出た何らかの因子が作用して着床しやすい環境を整えようといった治療法になります。
SEET法の流れ
- 採卵周期にて胚を培養した時の培養液を凍結保存する
- 胚移植の2~3日前にその培養液を子宮内に注入
- 数日後に胚盤胞を移植
という流れで、着床の準備を整えることを目的としています。

SEET法で妊娠率は上がる?
結論からお伝えすると、
現時点では、妊娠率や出生率が明確に向上するという強いエビデンスは確率していません。
2020年に発表されたレビューでは、「胚培養液の子宮内注入が出生率を改善するという十分な証拠はない」という報告もあります。
Siristatidis C, et al
Endometrial injection of embryo culture supernatant for subfertile women assisted reproduction
Cochrane Database Syst Rev. 2020;8:CD013063.
しかし、一方で反対に有効だといった意見の論文もあり、国内の学会でもSEET法が有効であったという報告もあります。
つまり、
・有効である可能性はある
・しかし確実とは言えない
・研究数はまだ十分ではない
というのが現在の医学的立場です。
SEET法のメリット
- 着床環境改善の可能性
胚が分泌した因子を含む培養液で子宮内膜を刺激することで、着床環境が整う可能性があります。
- 多胎妊娠リスクを増やさない
SEET法と同様の原理で行われている「二段階胚移植法」は胚を2個戻すため、多胎率が上がる可能性があります。
SEET法は単一胚移植のまま実施可能であり、多胎リスクを増やしません。
SEET法のデメリット・注意点
- 効果が保証されていない
妊娠率・出生率の明確な改善は証明されていません。
- 先進医療(保険適応外)
SEET法は先進医療扱いとなり、保険適応外部分の自己負担が発生します。
- すべての方に適応ではない
・新鮮胚移植では通常実施しない
・原因が胚側にある場合は効果が期待しにくい
・採卵時にSEET液を凍結しないとSEET法を行えない
SEET法はこんな方に検討されることがあります
・良好胚を移植しても妊娠に至らなかった方
・着床不全が疑われる方
ただし、『必ず妊娠率が上がる治療』ではないことを理解した上で検討することが重要です。
SEET法の費用は?
・先進医療で実施の場合(2026.3.1現在)
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SEET法処置 |
30,000円 |
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培養液凍結費 |
無料 |
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胚移植費 |
別途 |
・自費診療で実施の場合(2026.3.1現在)
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SEET法処置 |
33,000円 |
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培養液凍結費 |
2,200円 |
|
胚移植費 |
別途 |
※料金は改定になる場合があります。
希望の方は医師にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
- 痛みはありますか?
胚移植と同程度で、強い痛みは通常はありません。
- 副作用はありますか?
重篤な副作用は報告されていませんが、軽度の出血や違和感が起こる可能性はあります。
- 何回目から検討すべきですか?
明確な基準はありません。
着床不全が疑われる場合に医師より提案させていただく場合があります。
まとめ
SEET法は、着床環境改善を目的とした方法ですが、その治療効果はまだ確立されていません。
しかし、身体的負担が少なく、効果があるという報告もあるため当院では複数回移植しても妊娠に至っていない患者さまを対象に医師より提案させていただいております。
SEET法を検討される場合は、採卵周期の胚盤胞凍結時でしかSEET液凍結はできないことにも注意が必要です。
不妊治療は「1つの方法で必ず結果が出る」ものではありません。
患者さま一人ひとりの状況に合わせ、医学的根拠に基づいて治療を選択することが重要となりますので、少しでも気になることがありましたら診察中などに気軽にご質問ください。
培養部 小倉