第34回 乳酸菌で精子は変わる?【男性不妊と腸内環境の最新研究】
「妊活のためにヨーグルトや乳酸菌サプリを摂取しています」
不妊治療において、女性側のこのようなお話はよくあります。
一方で男性はというと、葉酸や亜鉛、コエンザイムQ10などはよく知られていますが、近年の男性不妊研究で注目されているのが
「腸内環境」
です。
さらに最近では
「精液にも細菌が存在する」
ことが明らかになってきました。
今回は、乳酸菌と男性不妊との関係について、最新の研究をご紹介します。
精液は無菌ではなかった
以前は、
「精液は無菌である」
と考えられていました。
しかし、近年の遺伝子解析技術の進歩により、健康な男性の精液にもさまざまな細菌が存在することがわかってきました。
これらは
「精液マイクロバイオーム(Seminal Microbiome)」
と呼ばれています。
腸内細菌叢と同じように、精液の中にも細菌の生態系が存在しているのです。

乳酸菌が注目されている理由
乳酸菌は、
- ヨーグルト
- 発酵食品
- プロバイオティクス食品

などに含まれることで知られています。
近年の研究では、乳酸菌を含むプロバイオティクスが腸内環境に良い影響を与える可能性が報告されており、その効果が男性不妊にも関係するのではないかと注目されています。
プロバイオティクスで精液所見が改善する可能性
2024年に発表されたシステマティックレビューでは、男性不妊患者を対象とした複数の研究が解析されました。
その結果、プロバイオティクスを摂取した群では、
- 精子濃度
- 精子運動率
- 総精子数
- 精液量
の改善が報告されていました。
もちろん、これだけで男性不妊が改善すると結論づけることはできません。
しかし近年の研究は、
「腸内環境と精子には何らかの関連があるかもしれない」
ことを示し始めています。
なぜ腸内環境が精子に関係するのでしょうか?
まだ完全には解明されていませんが、現在考えられている仕組みがあります。
慢性的な炎症との関係
腸内環境の乱れは、全身の慢性的な炎症と関連することが知られています。
慢性炎症が続くと酸化ストレスが増加し、
- 精子運動率の低下
- 精子DNA損傷
- 精液所見の悪化
につながる可能性があります。

プロバイオティクスには、こうした炎症反応を抑える働きが期待されています。
精液中の細菌環境との関係
最近では、精液中にも独自の細菌叢が存在することがわかってきました。
これまで精子そのものに注目されてきた男性不妊研究ですが、近年は
「精液の中の微生物環境」
にも関心が集まっています。
実際に複数の研究では、精液中の細菌叢の構成と精液所見との関連が報告されています。
まだ因果関係は明らかではありませんが、細菌環境が精子の状態に影響している可能性が注目されています。
ヨーグルトや発酵食品を食べれば妊娠率は上がる?
残念ながら現時点では、
「ヨーグルトや発酵食品を食べると妊娠率が上がる」
と断言できる研究はありません。
また、
「乳酸菌サプリを飲めば精液所見が改善する」
ともまだ言い切れません。
現在の研究結果は、
「腸内環境や微生物環境が男性不妊に関係している可能性があり、乳酸菌はその候補の一つとして注目されている」
という段階です。

培養士からのメッセージ
男性不妊というと、
- 精子
- 精巣
- ホルモン
に目が向きがちです。
しかし近年の研究では、
「腸と精子のつながり」
が少しずつ見えてきています。
もちろん、ヨーグルトだけで精液所見が劇的に改善するわけではありません。
しかし、
- バランスの良い食事
- 適度な運動
- 十分な睡眠
とともに、
腸内環境を整えることも健康的な妊活の一つといえるかもしれません。

乳酸菌と男性不妊の研究はまだ発展途上ですが、今後の研究成果が期待される分野の一つです。
培養士:川島
参考文献
- Puerta-Suárez J, Cardona-Maya WD. Is Lactobacillus spp. beneficial in human semen? A systematic review. World J Mens Health. 2025.