第36回 【体外受精の心臓部!】培養室の一日について
8月も終わりに近づきましたが、まだまだ暑い日が続きますね
しかし外の天気とは対照的に、私たち胚培養士が働く「培養室」は年間を通して温度が一定に管理されています。
今回のコラムは、皆さまの大切な受精卵(胚)を最適な環境で培養するため、日々どのような業務を行っているか、私たち培養士の1日をお届けしたいと思います!
8:00~培養環境のチェック&胚の観察と凍結
ノアでは培養士の業務は朝の8時から始まります。
そして私たち培養士が朝出勤してまず行うことは、培養環境の確認です。
卵子や、胚を取り扱うため、機器の温度やガス濃度が適切な上程に保たれているか毎朝確認し、記録をとっています。

↑ガス測定器で毎朝、培養器内のガス濃度が適正値であるかチェックしています。
朝はタイムラプスで培養している胚の観察から始まります。
当院では2台のタイムラプスインキュベーターを導入し、インキュベーターの外に出すことなく、連続的な培養の様子を確認できます。
凍結する胚盤胞は培養士の目によるグレーディングと、iDAスコアを加味して決定しています。 当院の凍結基準を満たした胚は超急速ガラス化保存法で凍結し、移植周期までタンクで保管されます。

↑タイムラプスインキュベーターで患者様の胚をパソコン上でリアルタイムに観察できます。
8:30~採卵手術&精子の洗浄処理
ラボは精子調整室とオペ室に繫がっている培養室の2部屋で構成されています。
採卵の精子が届き始めるので精子調整室では精子調整を、培養室では採卵手術が始まるので検卵を行います。
【精子調整】
届いた精子はよく攪拌して、SMASという装置で濃度や運動率を測定します。
その後、遠心機にかけ遠心分離を行い、cIVFならswimup後の運動精子を、ICSIなら遠心後の沈査を回収し使用します。
詳しくは”第2回 精子のあれこれ”をご参照ください。
【検卵】
採卵では、顕微鏡下で採取した卵胞液をディッシュにまいて卵を探します。
検卵者とは別の培養士が卵胞液の入ったディッシュをダブルチェックして卵の取りこぼしがないように努めています。
10:00~人工授精の精子洗浄&移植胚の融解作業&翌日の準備
AIH(人工授精)や精液検査の検体が届き始めます。
AIHも採卵で調整した精子同様に遠心機にかけて遠心分離をし調整を行います。
10時になると、培養室では移植患者様の凍結保存されている胚を融解し始めます。
午後に行う胚移植の時間まで、凍結により収縮した胚を元の状態に戻すまでの回復培養時間を確保するためこの時間から胚の融解を行います。
また、融解時にAH(アシステッドハッチング)を行い、胚を包んでいる透明帯から出やすくします。
さらに翌日に使用する培養液の準備も午前中に行います。
このように、培養室では午前中に行わなければならない作業が沢山あり、朝の時間はあっという間に過ぎていきます…。
12:00~13:00 朝に採卵した卵子の授精操作
cIVF(ふりかけ法)
検卵で回収した培養ディッシュ内の卵に精子を一定量ふりかけて自然に受精するのを待ちます。
SMASで測定した精子の濃度や運動性がある程度ないとできないことがあります。
ICSI(顕微授精)
過去にふりかけ法を行って成績が良くなかった場合や、精子の濃度や運動率によりふりかけ法ができない場合に行います。 精子の運動性や頭部の形、大きさを見ながら1匹選び極細い針で卵子の中に注入します。

↑顕微授精の様子
15:00~胚移植
融解した胚を移植します。
スマートステーション内でカテーテルに胚をローディングし、オペ室で先生に手渡しします。
子宮底部に胚を戻したあとは、カテーテル内に胚が戻ってきていないか確認して移植は終わります。

↑カテーテルに胚をローディングしている様子
16:30~カンファレンス&ラボのお掃除
胚や精子を取り扱う操作が完全に終了したら培養室と精子調整室の掃除を行います。
毎日、使用した機器に破損がないかを確認し、アルコールで拭きあげ清潔に保ちます。
同時に翌日の申し送り事項や今日あったことを全体で周知するカンファレンスを行います。
1日のまとめ

培養士の一日はいかがでしたか?
このコラムを通して培養士のリアルな部分が少しでも伝わっていれば幸いです。
私たち培養士は、直接皆さまとお会いする機会は少ないものの、いつでも患者さまの思いに寄り添い、大切な配偶子をお預かりしています。
まだまだ暑い日が続きますのでしっかりと水分を摂取して暑い夏を乗り切りましょう。
培養室 森