Noah ART Clinic武蔵小杉(ノア・アートクリニック)

培養室コラム

第37回 【胚移植用の培養液に新しい選択肢を】GM-CSF含有培養液について

9月になって朝晩の暑さは少し和らいできたかなと感じるようになってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。

私は趣味の朝のジョギングがはかどるようになってきて休みの日の朝が待ち遠しい今日この頃です。

さて今月のブログでは当院でも使用している胚移植時に用いる培養液のひとつ、GM-CSF含有培養液についてお話してみようと思います。

GM-CSFとは?

GM-CSFは“顆粒球マクロファージコロニー刺激因子“というサイトカインの一つです。

サイトカインとは細胞間でのコミュニケーションツールのようなもので、この働きによって細胞の増殖や分化などの指示を他の細胞に伝える役割を担っています。

GM-CSFはヒトの卵管内や子宮内膜から分泌されており、胚(受精卵)と母体間のコミュニケーションを図り相互の発生と成長を促進、同調させる働き等があるとされています。

【GM-CSFの働き】

具体的な効果

〇胚の着床を促す

半分が父親由来の遺伝子である受精卵を異物として排除しないように母体側が受け入れる免疫寛容というシステムをコントロールしているサイトカインとして働き、胚の着床や妊娠の維持を促す働きがあります。

〇胚細胞のアポトーシス(自死)を抑制&細胞数の増加

母体側から分泌されるサイトカインを培養液に添加することでより自然に近い培養環境を作ることにより、細胞ストレスから胚を守り細胞のアポトーシスを抑制して、胚発生を促します。

〇反復流産歴のある患者で流産率を低下させる可能性

反復不成功例の患者様においてはGM-CSFの分泌が低い傾向も認められるため、不足しているサイトカインを補うことで流産率を低下させることが期待できます。

使用方法の実際

凍結融解胚移植に用いる凍結胚を移植周期で融解する際に使用します。

凍結胚は午前中に融解されるのですが、胚移植される午後の時間までの数時間、GM-CSFを含む培養液内で培養されます。

その後、実際に胚移植する際は少量のGM-CSFを含む培養液と共に子宮内へ胚を戻します。

治療する上でのデメリット

ここまでお話してきて様々なメリットが期待できるGM―CSF含有培養液ですが、この治療法には保険が適応されていません。

そのため自費診療となり、費用が高額になることが大きなデメリットです。

まとめ

GM-CSFを含有している培養液の使用は上記の通り、胚の細胞数の増加や胚と母体間の細胞間シグナル伝達を促すことに寄与し、妊娠率の向上、流産率の低下にとても有効な治療法といえます。

一方で、保険が適応されず費用が高額になってしまうため、当院では自費診療の患者様のみを治療の適応としています。

しかし、国内での大規模な臨床研究は始まっていますので今後、保険適応または先進医療の適応となることが期待されます。

今回ご紹介したGM-CSFに限らず、生殖補助医療の分野では日々新しい技術や治療法が取り入れられ治療のアップデートが進んでいます。

私たち培養士も患者様に最善の治療を提供できるよう、今後も技術、知識のブラッシュアップを怠らず励んでいきたいと思います!

                                            培養室 鈴木

〈参考文献〉

・Ostanin AA, et.al ”Role of cytokines in the regulation of reproductive function” Bull Exp Biol Med. 2007    Jan;143(1):75-9.

・Sjoblom,C et.al ”Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF) acts independently of the beta common subunit of the GM-CSF receptor to prevent inner cell mass apoptosis in human embryos” Biol Reprod.2002 Dec;67(6):1817-23

・Sjoblom,C et.al “Granulocyte-macrophage colony-stimulating factor promotes human Blastocyst development in vitro”
Hum Reprod. 1999 Dec;14(12):3069-76.

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