第28回 【妊娠の可能性を高めるには?】良い胚の選択方法の解説
みなさんこんにちは。新人培養士の平石です。
まだまだ猛烈な暑さが続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。
10月に入り、2025年も残すところあと3ヶ月となりました。早いですね~。
また私もこのNoah ART Clinicに入職して6ヶ月になりました。早いですね…
そんな私が入職してから学んだことの1つである胚盤胞のグレードと妊娠率について、コラムを書いてみました。
治療を受けられている患者様においても、1度の採卵で複数個の卵子が採れ、複数個が胚盤胞(受精卵)になった時、どの胚盤胞を移殖すれば妊娠につながるのかというのは気になるところではないでしょうか。
そこで、医師や私たち胚培養士がどのように胚盤胞を選んでいるのかを簡単に説明したいと思います。
グレードを付ける
結論から言いますと基本的には胚盤胞を見て評価し、グレードを付けています。
原則グレードが高いものから移殖をし、妊娠に至らなかった場合はその次にグレードの高い胚盤胞を移殖する、ということになります(患者様の症例によって変わることもあります)。
胚盤胞の評価方法
胚盤胞の評価には一般的にGardner(ガードナー)分類という評価方法が用いられます。
これについては当院の第三回コラムで解説していますので、ぜひそちらをご覧ください。
グレードごとの妊娠率
こちらは当院の2024年度のデータになります。

このように、グレードが良好な胚盤胞、特にTE(胎盤になる細胞)のグレードが良好な胚盤胞の妊娠率が高い傾向にあるということがわかります。
しかし、グレードが高い胚盤胞でも、年齢が高くなると妊娠率はどうしても低くなってしまいます。
これは主に染色体の異常率の上昇によるもので、グレード(見た目)だけでは予測できない部分です。
AAの胚盤胞でも染色体異常によって着床しない、あるいは早期流産になることもあります。
一方でグレードが低い胚盤胞でも染色体が正常であれば、妊娠、出産に至るケースも十分にあります。
AIを使った胚盤胞のスコアリング
当院ではGardner分類による見た目の評価に加えて、「iDAScore(アイダスコア)」というAIによるスコアリングシステムを導入しています。これは当院で使用しているEmbryoScopeというタイムラプスインキュベーターに搭載されるもので、タイムラプスで得られた画像をAIが自動解析し1~9.9の範囲でスコアリングするシステムです。
このiDAScoreの数値が高いほど妊娠率が高い傾向にあるため、当院では胚盤胞を選ぶ一つの指標として取り入れています。
最後に
胚盤胞の評価や妊娠率については、個々の症例で大きく異なります。グレードと妊娠率には相関があるとされていますが、あくまでも指標であるため、患者様それぞれの背景などをふまえて総合的に判断する必要があると考えています。
これからも情報や最新技術をアップデートしながら、より妊娠率が上がるよう努めてまいります。
また、私自身も一人前の胚培養士になれるよう精進してまいります!