第1回 胚培養士って?
立春を迎え、春の訪れを少しずつ肌で感じるようになってきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
ノア・ウィメンズクリニック胚培養士の小倉です。
早いもので、2020年6月でノア・ウィメンズクリニックは開院15周年を迎えます。
今後もスタッフ全員で一丸となって真摯に診療を行っていく所存です。
その節目である今年から院長コラム改め「培養士コラム」をお送りしていきたいと思います。
培養士コラム第1回は、私たち胚培養士について紹介していきます。
胚培養士はいつもラボ(培養室)の中にいてどんな仕事をしているのか知らない方も多いかと思います。
そこで、Q&Aで説明していきたいと思います。
Q1. 胚培養士ってどんな人がなっているの?
胚培養士は生物系の大学を卒業した人や、臨床検査技師がなっていることが多いです。
当院は、生物系の大学院卒が4名、生物系の大学卒が3名、臨床検査技師が1名というメンバーになっています。
Q2. 胚培養士の資格はあるの?
日本卵子学会の認定資格である「生殖補助医療胚培養士」と、エンブリオロジスト学会の認定資格である「臨床エンブリオロジスト」の2つがあります。
資格試験は年に1度実施されており、「生殖補助医療胚培養士」の合格率は65~80%となっています。
当院は5名が「生殖補助医療胚培養士」の資格を持っています。
これらはあくまで認定資格なので、国家資格とは異なり、持っていなければ胚培養士になれない、というものではありません。
Q3. どんな仕事をしているの?
胚培養士の主な仕事は、”採卵してとれた卵子をお腹に戻すまでお世話をすること”、“人工授精の精液調整”、”各種検査(精液検査やホルモン測定など)”、および”ラボの管理”です。
ここでは卵のお世話についてもう少し詳しく説明します。
採卵当日、ご主人様の精子を調整し、その調整した精子を採卵でとれた奥様の卵子と一緒にして受精させます。
その際の受精方法はcIVF(体外受精)とICSI(顕微授精)の2種類あります。
cIVF
精子と卵子を1つの容器に入れて培養します。精液所見が良好の方が適応です。
ICSI
精子を1個選んで卵子に直接注入します。精子の少ない方、運動性の悪い方、受精障害がある方に適応となります。
当院でのICSIはIMSIといって、より高倍率で精子を観察できるシステムを採用しており、技術の習得にも時間をかけますので、高い技術力を有しています。
このようにして受精した卵子はインキュベーターという胚を培養するお部屋に入れ、培養します。
培養3日目で新鮮胚移植を行う場合もありますが、基本的には培養3日目の初期胚と呼ばれる状態で凍結保存する場合と、培養5日目、6日目まで培養し、胚盤胞という状態になったら凍結保存する場合がほとんどです。
凍結した胚は奥様の内膜の状態が最適になったら、融解し移植を行います。
最後になりますが、高度生殖医療、いわゆる採卵をして体の外で受精させることをAssisted Reproductive Technologyの頭文字をとってARTと呼びます。
近年、出生児の20人に1人はART出生児といわれています。その中で胚培養士は、責任をもって皆様の大切な受精卵をお預かりしています。
しかし、私たち胚培養士の力だけでは受精卵を作り出すことも、妊娠する胚を作り出すこともできません。
私たちは卵子や精子の受精する力や受精卵の成長する力に少し手を添えてお手伝いしているだけに過ぎません。
その中でどうしたら卵子や精子、受精卵にとって最良の状態を保てるかを日々考え、知識を積み重ねながら業務に取り組んでおります。
皆さんとお話しする機会はなかなかないのですが、今後はこちらで培養士の仕事内容の詳細や最新の知見等を紹介していく予定ですので、よかったら見てみてください。
最近はコロナウィルスの影響でマスク不足などが続いていますが、手洗いうがいをしっかりと行い、感染防止に努めていきましょう。しかし、過度のストレスは妊娠に悪影響を与えるといった報告もありますので、可能な範囲で適度にリフレッシュしてくださいね。
培養士 小倉