Noah ART Clinic武蔵小杉(ノア・アートクリニック)

培養室コラム

第2回 精子のあれこれ

ようやく寒さも衰え始めた今日この頃、皆様いかがお過ごしですか。

ノア・ウィメンズクリニック胚培養士の森です。

 

培養士コラム第2回では、コラム第1回で説明があったどんな仕事をしているの?の中から精子を扱った業務にクローズアップしてお話をしたいと思います。

 

はじめに

当院で精液を扱う業務は以下の通りです。

 

・AIH(人工授精)、cIVF(体外受精)、ICSI(顕微授精)に使用する精子の調整

・精子凍結

・精液検査

 

AIH、cIVF、ICSIで用いる精子は精子調整を行っています。

どうして精子調整が必要なのか?どんな手順で調整しているかをお話ししたいと思います。

 

どうして調整が必要なの?

精液の中には精子だけでなく細胞成分や細菌、白血球が含まれておりそれらを取り除くことが可能であると同時に運動精子が濃縮されより良い精子が集まります。

 

どんな方法で調整するの?

精子の調整には「密度勾配遠心法」を用いています。

成熟精子は比重が1.11〜1.12といわれています。特別な比重の分離培地に重層し遠心することで比重の壁を越えられた成熟精子が底に沈み、越えられなかった比重の小さい未成熟な精子や死んだ精子と分離することができます。

当院では密度勾配遠心法で得られた精子をAIH、ICSI、精子凍結に用います。

<密度勾配遠心法>

 

希釈精液(培養液と精液を混合)を分離培地と混ざらないように重層し遠心をすると成熟精子が底に沈み、死滅精子や未熟な精子は上層にトラップされます。

トラップされた精子を取り除き、底に沈んだ精子を培養液と混和し遠心することで分離培地が取り除かれます。

2回目の遠心後に得られた沈殿物(良好な精子)はAIH、ICSIに使用します。

精子凍結の場合は、凍結剤を混和して精子凍結を行います。

cIVFでは卵子に向かって真っ直ぐ進む力が必要になるのでswim-up法により運動性の

よい良好精子を回収する必要があります。

 

密度勾配遠心法で得られた良好な精子懸濁液を静かに培養液の底に沈めます。運動性が高く前進性の高い精子は自らの力で拡散していきますので、運動性の高い精子は上部まで上がってきます。この上がってきた運動精子を回収し体外受精に使用します。

 

 

 

検査ではどんなことがわかるの?

精液検査では提出して頂いた検体をもとに精液量、原液の精液1ml当たりの精子濃度、総精子数、運動率を測定します。

当クリニックではCASA(精子運動解析装置)のSMASを導入し、自動解析による客観性のある結果をお伝えしています。(下の表はWHOによる精液所見に対しての下限基準値です)

 

精子に影響がある生活習慣とは?

精液検査の所見は生活習慣や体調、ストレスなど様々な影響を受けて日々変化し結果が大きく異なります。

 

精子の質が下がる習慣として喫煙、長時間自転車に乗る、長時間のサウナ、膝上でのノートパソコン作業することが挙げられます。

タバコに含まれるタールなどの成分は酸化ストレスを引き起こし精子のDNA損傷を引き起こします。

長時間の自転車走行ではサドルの刺激で男性器付近の血流が悪くなり、ED(勃起不全)や精子の減少などの影響を及ぼします。

 

精子が作られる精巣は熱に弱く、長時間のサウナや膝上でのパソコン作業はできるだけ控えるか膝上に鞄を置いてその上でパソコン作業をするなど精巣が直接温められないような工夫すると良いかもしれません。

 

サウナも短い時間で楽しんでリフレッシュしてくださいね。

サウナに関するコラムはこちら↓

https://noah-art.jp/column/detail/25/

 

また、精子形成には74日~120日かかります。そのため、今生活習慣を改善した場合、射出精子に影響が出始めるのは約3ヶ月後となるので長期的な生活や健康状態が精子所見としてあらわれます。

 

最適な禁欲期間は?

精液検査に限らず、精液を採取する際には禁欲期間、採取時刻を書いていただいていますが、皆さんはどのくらいの禁欲期間での採取が良いと思いますか?

 

禁欲期間が長ければ長いほど精子の数が多くなって良いのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

あまりに長いと古い精子が貯まり濃度は高くなりますが、古い精子は活性酸素を放出し酸化ストレスを与えます。

酸化ストレスのダメージは精子DNAの損傷や運動率低下を引き起こします。

 

当院では2~3日の禁欲期間を推奨しています。

 

 WHO(World Health Organization: 世界保健機関)で提唱されている「精子の正常基準値」は、12ヶ月以内にパートナーが妊娠したことを判断基準として男性の精液所見が正常であると定義し、3大陸8カ国に属す男性400~1900の精液をサンプルとしてデータ-が作られています。

各検査項目の5パーセンタイルが下限値基準値とされており、それ以上を正常基準値とみなしています。

 

最後に

当クリニックでは昨年末からTENGAヘルスケアの精液運搬用保温器SEED PODを販売しています。

精子は温度変化に弱く、暑いのも寒いのも苦手でそのような環境に長時間さらされると運動率の低下など精子にとって悪い影響を及ぼします。

精子の保温には常温(20~25℃)が良いとされているので今のような寒い時期、夏の暑い時期に長時間外気に触れる場合は手のひらサイズのSEED PODをおすすめします。

当クリニックホームページに詳しく記載されているので是非読んでみてくださいね。

興味があれば気軽にスタッフにお声掛け下さい。

 

天候の変わりやすい花どきの季節です。

風邪など引かれませんよう暖かくしてくださいね。        

                                          培養部 森

                                    

 

                             

 

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