Noah ART Clinic武蔵小杉(ノア・アートクリニック)

培養室コラム

第8回 採卵

こんにちは。

培養部の川島です。

今回のテーマは「採卵」です!

 

前回のコラムで体内の卵子がどのように成長し、排卵されるのかについてお話ししました。ですので、本日は採卵当日、どのようなことが行われているのか、わかりやすく説明していきます。

まず、採卵は大きく分けて下のステップで成り立っています。

 

 

ホルモン刺激による卵胞発育(前回のコラム参照)

排卵誘発(前回のコラム参照)

採卵

卵胞を吸引し、卵胞内の液を取ってくる

卵胞内の液から卵子を見つける

体外受精まで数時間ほど卵子を休ませる

 

 

順番に解説していきます。

まず、前回のコラムにも出てきましたFSHやE2などのホルモンによって卵胞を育てていきます。通常、主席卵胞といわれるただ1つの卵胞のみしか発育しませんが、お薬によるホルモン刺激により、個人差や年齢による差はありますが複数個の卵胞が育ってきます。

 

採卵の約36時間前にトリガーと言われるLHサージを引き起こすための排卵誘発剤を使用します。

 

そのため、採卵当日はちょうど体内の卵子が精子を迎え入れる準備が整った状態でスタンバイしています。

ある程度余裕をもったスケジュールで組んでいきますが、あまり待たせてしまうと、待ちきれずに排卵してしまいますので、その前に卵子を取ってくる必要があります。

これを“採卵”といいます。

 

当クリニックでは8時30分頃からOPE室でお名前の確認などご本人様確認をさせて頂いた後に採卵が始まります。

採卵では局所麻酔を使用し、エコーを見ながら卵胞の中の卵胞液という液体に浮かんでいる卵子を卵胞液ごと優しく吸い取ることで卵子を体外に連れてきます。

下記の画像を見ていただけるとイメージしやすいかと思います。

Fig.1 自動吸引による採卵

 

 

吸引する際は、採卵用の特殊な針にアスピレーションシステムという自動吸引装置を使用しています。自動吸引装置は注射器による手動吸引と比較して細かく吸引力のコントロールができるため、卵へのダメージが格段に低くなります。

 

 

吸引された卵胞液は下の画像のようにチューブに貯められ、速やかに培養士へと渡されます。

 

Fig.2 吸引した卵胞液

 

 

渡されたチューブの中身をすべてシャーレに入れ、顕微鏡下にて卵子を探していきます。

 

 

Fig.3 卵胞液をシャーレに移動

*fig.2およびfig.3は卵胞液ではなく培養液を使用しております。

 

体外受精を行う上でどうしても避けて通れない問題があります。

それが”環境の変化”です。

体内から外に出た卵子は大きな環境変化を受けることになります。

我々に例えますと、北極で服を脱いで裸になるくらいの変化を想像してみてください。それはダメージとなり、後に卵子の発育に影響を与える要因となると考えられています。

 

Fig.4 卵子の環境変化

 

また、卵胞液の中には、血液や細胞、卵子に似た組織片など卵子を探す上で大きな妨げになるものが存在しており、それらを素早く見分ける必要があります。

従って、卵胞液の中からいかに素早く卵子を見つけられるか、環境の変化をどれだけ小さくできるかが、採卵における我々培養士の腕の見せ所となってくるわけです。

当培養室では、体内との環境変化を抑えるため、スマートステーションという特殊な機械の中で卵子の探索をしています。

これにより、温度やCO2濃度を保ちながら卵子を探すことができるため、一般的な施設よりも卵子へのダメージを抑えた採卵が可能です。

 

Fig.5 スマートステーション

 

 

見つけた卵子は洗浄液できれいに洗い、速やかに培養液に移動させています。

何故洗浄が必要かといいますと、卵胞液には卵胞を穿刺した際に少なからず血液が混入しており、この血液成分が受精など卵子にとって負の影響を及ぼすと考えられているためです。

 

もう1つ卵子にとって非常に影響があると考えられている要素として、採卵中に使用する洗浄液や培養液が挙げられます。

わかりやすく例えると、洗うと髪がばさばさになるシャンプーを使っているか、すべすべになるダメージケアシャンプーを使っているかということですね。

もちろん、卵子は髪の毛と比較にならないほど繊細で、このダメージだけで発育が止まることもあります。

 

従って、当培養室では非必須アミノ酸などの栄養素を含む洗浄液および培養液を使用することで、栄養因子低下による卵子や胚の発育やクオリティを低下させないよう努めています。

 

 

採卵終了後、体外受精を行うまでのあいだの数時間、卵子はお休みです。

インキュベーターという温度や酸素および二酸化炭素濃度が適正濃度に制御された場所で保管しますので、安心してお休みできます。

 

Fig.5 インキュベーターにて保管

 

 

ここまでが採卵です。

 

体外受精を行う上で最も重要な採卵のお話でしたが、いかがだったでしょうか。

これから体外受精を考えている、または、すでに行っている方がいらっしゃると思いますが、少しでも皆さんの理解と知識の助けになれば幸いです。

 

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