第11回 サウナによる精子への影響
皆さんこんにちは!
培養部の中島です。
今回は「サウナ利用による精子への影響」についてお届けします。
夏も本格化してきていますが、依然としてサウナブームは続いていますね。
サウナは単にリラックスできるだけではないようで、近年、心機能や交感神経系の調節効果など、サウナによる利点が科学的に明らかにされつつあります。
やはりサウナは万能だ!と思いたいところですが、マイナスの効果も複数研究されており、一概に『健康に良い』とは言い切れないのが現状のようです。
特に精子にとっては、サウナの温度は真夏の外気温よりもはるかに強い刺激であり、この高温による精子への悪影響が懸念されています。
というのも、以前から精子が熱に弱いということは数多くの学術論文で実証されていました。
精巣が体の中心部から離れた構造になっているのもこの為と考えられています。
ということで今回は「サウナと精子に関する学術論文」をご紹介します。
サウナ利用による精子への影響
この研究では、精子に障害のない男性10人(平均年齢33歳)を対象にサウナ利用による精子への影響を調査しました。サウナ曝露の条件は80〜90℃、湿度20〜30%のサウナに15分間、週2日、3ヶ月間全身をさらすというものでした。
その結果、継続的なサウナ利用により精子の総数と運動率が30~50%程度有意に減少していたことが明らかとなりました。さらに、精子DNAの構造異常やミトコンドリア機能の低下といった精子の質的な悪化も見られました。
妊活中のサウナ利用は避けるべきか?
つまり、サウナによって造精機能(精巣で新しく精子を作る能力)に障害が引き起こされる可能性が示唆されています。
これは受精に欠かせない良好な精子をみすみす失ってしまうことにもなり得ますね。
ただ、この精子の障害はサウナ利用をやめることで回復することも報告されているので、サウナを趣味としている男性も取り返しがつかないというわけではないようです。
妊活を行っている間はサウナを利用する時間や頻度を少し控えめにしてみても良いかもしれませんね。
まとめ
さて、今回はサウナの高温が精子にダメージを与えることについてご紹介しました。
ただ、サウナ以外にも過度な喫煙や飲酒など多くの因子が精子の数や質を変化させることが知られています。
本コラムがご自身の生活習慣と向き合ってみるきっかけとなれば幸いです。
まだまだ暑い日が続きますので、栄養と水分をよく摂って、今年の夏も乗り切っていきましょう。
引用論文 "Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis", Andrea Garolla et al., 2013