第16回 【第68回 日本生殖医学会】参加レポート
最近はめっきりと寒くなり、おでんが美味しい季節になってきましたね。
培養室の小倉です。
金沢で学会発表をしてきました
今回のコラムでは、先月に石川県金沢市で開催された『第68回 日本生殖医学会』に参加してきたので、学会レポートをさせていただきます。
本学会では医師2名、培養士1名のポスター発表と、培養士1名の口頭発表を行ってきました。
培養士によるポスター発表は「短時間媒精後のPB所見における予後の解析」、口頭発表は「ヒアルロニダーゼが胚に与える影響」という発表でした。
発表内容は割愛しますが、たくさんの質問をいただき、有意義な議論を交わすことができました。
今回の学会発表では、先進医療として登録されている“移植時に使用するヒアルロン酸含有培養液”の有用性に関する発表や、精子についての演題が多かったように感じました。
精液調整デバイスに関する演題
最近の不妊系学会のホットな話題は精子です。
なぜ精子なのかというと、今まで不妊治療は卵子や胚にばかりフォーカスされていました。
そのため、卵子や胚はたくさんの研究がなされ、次に改善できるとしたら【精子】だ!と白羽の矢が立ったわけです。
(もちろん卵子や胚ももっと改善の余地はありますし、今もなおたくさん研究発表されています。)
最近は精子のDNA断片化を最小限にする、新しい精液調整デバイスが開発されています。
今までは遠心をかけて精液調整を行っていましたが、遠心を行わずにやさしく調整してあげよう、という精子に優しいデバイスです。
そのデバイスを使用して精液調整を行うことで精子のDNA断片化が有意に減少したそうです。
当院でも今後そのような精液調整デバイスを導入していきたいと考えています。
生まれてくる児の性別に関する演題
また、今回の学会で気になった演題のひとつに、「第一子、第二子が男児だった場合、第三子も男児が生まれる確率は高いのか?」という統計をとった発表がありました。
よく3人目も男の子(女の子)だったよーとか、聞きますよね。
統計上、男児が生まれる確率は約50%なので、1人目でも3人目でも50%のはずです。
しかし、1人目、2人目ともに男児だった場合は、そうでない場合より男児が生まれる確率が高いという統計データが出たそうです。
その原因については遺伝性なのか、そうではないのか不明だそうです。
今回ご紹介した報告以外にも勉強になる演題がたくさんありました。
今後も学会参加し、皆様に還元できればと思います。
まとめ
不妊症はまだまだわからないことがたくさんあります。
世界で初めてのART出生児が生まれたのは、1978年のことです。
イギリスのLouise Joy Brownは世界初の体外受精児として話題になったので、知っている方もいるかもしれません。
ARTの歴史はそこから始まり、まだ45年の月日しか経っていません。
そのため、日進月歩で新しい技術が開発され、新しい知見が積み重なっています。
情報や最新技術をアップデートしながら、より妊娠率が上がるように工夫し、技術を磨いていくのが培養士であると考えています。
今後も学会に参加し、新しい知見などをレポートしていきたいと思います。
今回のコラムが今年最後となります。
2023年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
P.S.これからより一層寒くなってくるかと思いますので、体を冷やさないようご自愛くださいね。