Noah ART Clinic武蔵小杉(ノア・アートクリニック)

培養室コラム

第17回【日の短い冬の季節は特に注目!】ビタミンDの働きについて

培養室の鈴木です。

 

新年あけましておめでとうございます。

 

本年もよろしくお願いいたします。

 

未だ能登半島地震被害の収束の兆しはみえませんが、被災された方や身近な方が被害に遭われた方には心からお見舞い申し上げます。

 

 

さて、2024年最初の今回は、”ビタミンD”についてお話してみたいと思います。

 

ビタミンDってどんなビタミンなの?

皆さんはビタミンDをご存知ですか?

 

もともとは腸管でのカルシウムの吸収を促進させ骨の成長を促したり、血中のカルシウム濃度を一定に維持することにより神経伝達や筋肉の収縮を司ることで知られているビタミンです。

 

近年では、ビタミンDに免疫機能を向上させる働きがあることも明らかになってきており、糖尿病やがん、心血管系の疾病予防など多岐にわたる効果が期待されるようになってきた注目のビタミンでもあります。

 

不妊治療でビタミンDはどんな効果があるの?

不妊治療の領域においてもビタミンDはインスリン抵抗性の改善作用があることから、PCOS症例においてビタミンDを補充することにより排卵に改善がみられるようになるとの報告があります。

 

また、半分が父親由来の受精卵を受け入れるのに女性側の免疫寛容が妊娠の継続には重要とされており、ビタミンDは免疫寛容に関連するTh2細胞やヘルパーT細胞を調節する制御性T細胞を増やし、一方免疫拒絶に関連するTh1細胞を抑制することが報告されています。

 

簡単に言うと、“ビタミンDには父親の遺伝子も入っている受精卵が、母親の免疫細胞に異物として認識されて攻撃されてしまうのを防ぐ役割があるということ”です。

 

また、ビタミンDには妊娠継続に適した免疫状態を誘導する働きから着床率や流産率の改善にも効果があるとの報告もあります。

 

不妊治療の領域ではこの他にも様々な有用な効果が報告されているビタミンDなのですが、2023年に発表された慈恵医科大学による大規模調査では実に98%もの日本人が日本内分泌学会などが提唱するビタミンDの基準血清濃度に達してないことが判明しました。

 

ビタミンDを効果的に摂取するにはどうしたら良いのか?

ビタミンDは紫外線を浴びることにより体内で合成されます。なので日頃の生活のなかで可能な範囲で適度な日光浴を意識してみるのも良さそうですね。

 

ちなみに日本人の食事摂取基準(2020年版)では成人の一日のビタミンD摂取の目安量は8.5㎍ですが、国立環境研究所の発表では紫外線の弱い12月の正午に顔と両手を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、横浜では約45分の日光浴で10㎍のビタミンDを生成することができるそうです。(夏場や、露出させる皮膚の面積を多くすることで時間は短くなります。)

 

食品ですとシラスやサケ、マイワシなどの魚や、きくらげ、しいたけ、まいたけ等のきのこ類、卵黄などに多く含まれています。

また、日光に当てると成分が増えるのでしらす干しや干しシイタケなどは特におすすめです。

 

その他にもサプリなどで摂取することも可能ですが、ビタミンDは脂溶性であるため体内依存度が高く多量に摂取し続けると高カルシウム血症を引き起こす等のリスクがあるのでサプリメントを利用する際は決められた摂取量を守るように気を付けてくださいね。

 

 まとめ

このように近年さまざまな効果が期待され注目されているビタミンDですが、昨今の生活様式的にも、また冬場は日照時間も短いことから特に不足しがちです。

 

この機会に治療のためだけでなく健康のためにも意識して摂取してみてはいかがでしょうか。

 

今年は暖冬とはいえまだまだ寒い時期が続きそうですね。インフルエンザやコロナウィルスも流行しているようですので皆様もお気をつけてお過ごしください。

 

 

引用文献

“Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry”,Hiroyasu Miyamoto et al. ,2023

 

“Effects of vitamin D supplementation on ovulation and pregnancy in women with polycystic ovary syndrome: a systematic review and meta-analysis”, Meina Yang et al. ,2023

 

“Vitamin D Effects on the Immune System from Periconception through Pregnancy”, Bianca Schoder-Heurich et al. , 2020

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