第18回 不足しがちな栄養素【亜鉛】
こんにちは。
培養部の中島です。
少しずつ暖かい日も増えてきて、春の訪れが感じられますね。
ただ、花粉にはもう少しじっとしていてほしいところです…。
さて、今回の題材は妊活における『亜鉛』の重要性についてです。
前回のビタミンDに続く、大事な栄養素シリーズですね。
亜鉛には健康な生活に欠かせない機能がたくさんあります。
細胞分裂やタンパク質の合成、体内に侵入してきた細菌やウイルスに対する免疫システム、正常な味覚や嗅覚、外傷の回復etc...
身体の中における亜鉛の活躍の場はかなり幅広く、特に性機能にとっては大きな役割を担っています。
亜鉛がどうして妊活に重要なの?
性機能における亜鉛の機能については古くから研究されており、サプリメントなども複数販売しているため、亜鉛が大事なんだ、ということはご存知の方も少なくないかと思われます。
女性の場合
亜鉛がもっている黄体ホルモンや卵黄刺激ホルモンの働きを高める効果が、適切な排卵や着床に必要と言われています。
男性の場合
男性ホルモンの生成に亜鉛が重要であることが知られており、亜鉛が不足した状態では精子の質や量に悪い影響を与え、男性不妊の一因となる可能性が示唆されています。
このように性ホルモンを調節し、胚形成や精子形成にも深く関わる亜鉛は、女性男性ともに適切に摂取するべき栄養素と言えるでしょう。
食事だけで亜鉛は十分?
現代人の多くは食事から亜鉛を十分に摂取できていないとの報告があります。
2015年の厚生労働省の決定では亜鉛の1日推奨量は男性10 mg/day、女性8 mg/day(妊婦は+2〜3 mg/day)とされています。
また、日本人の一般的な献立による1日の亜鉛摂取量は9 mg/dayだそうです。
「なんだ、足りてるじゃん!」
と思われた方もいるでしょうが、健康的な献立を毎日作るのは難しく、スーパーやコンビニの食品に頼ることもあるかと思います。
実際、近年の日本の食卓には加工食品が多い傾向にあり、
それら加工食品に含まれる食品添加物の一つ、亜鉛キレート剤には亜鉛の吸収を阻害する効果があるのです。
つまり、食事から亜鉛を摂取していても同時に加工食品を食べている場合は、体へ吸収される亜鉛の量が本来の吸収量よりも少なくなってしまうということです。
現代において加工食品を全く口にしないことは難しいでしょうし、サプリメントでの摂取を検討してみてもいいのかもしれませんね。
亜鉛を摂取しすぎるのは良くない?
亜鉛には銅の吸収を阻害する働きがあるため、亜鉛過多な状態では銅欠乏症を引き起こし、軽度なら胃の不調、重度の症状では貧血や骨異常、心血管系や神経系の異常などの恐れがあります。
極端に偏った食生活でない限り、食事から亜鉛の過剰摂取に陥ることは少ないと思われますが、サプリメントを利用する場合は指定の摂取量にきちんと従うことをおすすめします。
亜鉛を効率的に摂取するにはどうしたらいいの?
参考までに亜鉛を摂取しやすい食品をご紹介します。
亜鉛を多く含む食品には魚介類、肉類、藻類、野菜類、豆類、種実類があります。
特に牡蠣には100gあたり14.5mgと亜鉛が非常に多く含まれます。
とはいえ、日常的に牡蠣をもりもり食べることは少ないと思われますし、複数の食材を少しずつ食べて、足りない分はサプリメントで補うような考え方が良いのかもしれませんね。
(ちなみにビタミンCや動物性タンパク質と一緒に亜鉛を摂取すると吸収効率が上昇すると言われています。牡蠣にレモンはただ美味しいだけじゃなかったんですね…。)
また、当院では亜鉛のサプリメントも販売しております。
待合室のモニターなどで見かけて気になった方はお気軽にお声がけください。
引用文献・資料
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」厚生労働省
「日本人における亜鉛摂取量の現状と摂取基準」, 駒井三千夫, 亜鉛栄養治療 6巻 1号, 2015
“The Role of Fe, Zn, and Cu in Pregnancy”, Konrad Grzeszczak, et al., 2020
“Zinc is an Essential Element for Male Fertility: A Review of Zn Roles in Men’s Health, Germination, Sperm Quality, and Fertilization”, Ali Fallah et al., 2018