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ひとによって妊娠するまでの期間が違うのはなぜ?

 

 

 

ひとによって妊娠するまでの期間が違うのはなぜ?
~妊娠の効率と受精卵の染色体異常~

赤ちゃんができた二人のお母さんたちが次回の妊活について話をしています。
Aさん:「私はすぐできたから、またすぐできるかな」
Bさん:「うちは不妊治療はしなかったけれど、作ろうと思ってからかなりかかったから、二人目も長くかかるかもしれない、心配だわ」
お二人共もっともな意見を言っているように聞こえますがさて、なぜ人によって妊娠するまでの期間が違うのでしょう?

答えは!
実は、この大切な疑問に対するはっきりした答えは現在ないのですが、多くの医師が考えている一つの仮説はあります。
それは、同じように精子と卵子は一緒になっている(受精している)のだけれど、その後着床する力を持った受精卵ができる確率が人によって違う、というものです。

受精卵の染色体異常の確率は意外と高い

ここからは、少し専門的な説明になります。
体外受精が普及して初めて分かってきたことのひとつに、受精卵が染色体異常である確率は思ったより高いと言う事実があります。

意外ですか?
実は、我が国のデータでも35歳以上では平均すると、実にその70%以上が染色体異常であると報告されています 。結構多い数字ですよね。
受精卵の染色体異常の率は26-30歳で最も低く、年齢とともにだんだん上がって、43歳を超えると80%以上になるとも言われています。この事は皆さんも一度はテレビやネットでも目にしたことがあると思います。

染色体異常の受精卵ができると、その後どうなるかを示したのが図1です。

 

図1.受精卵染色体異常の程度と流産・着床不全の図

 

異常がない受精卵(A)では、生理の時期になっても出血が起きないで、妊娠検査は陽性となり、お産になります。

軽度の異常がある受精卵(B)の場合、検査は陽性ですが、その後受精卵は育たなくなり、しばらくして出血が起こります(流産)。

Cの場合、Bより早くに育つのをやめてしまいますが、生理近くまで受精卵は発育しているので、たとえば生理一日目に検査をすれば妊娠検査は陽性になるでしょう。

でも、普通生理になったのに妊娠検査をする人はいませんから、妊娠に気が付かないで過ぎてしまいます(潜在妊娠)。

さらに重度の染色体異常では(D)、受精してすぐに育たなくなってしまうため、着床も起こらず、妊娠反応ももちろん陰性です(着床不全)。

様々な理由で妊娠までに時間がかかることがあります

図2を見てみましょう。

図2.妊娠するまでの時間が異なる理由

Aさん 妊娠するまでの時間が異なる理由_Aさんの図
Bさん 妊娠するまでの時間が異なる理由_Bさんの図
Cさん 妊娠するまでの時間が異なる理由_Cさんの図


Aさんは、子作りを始めたその周期に妊娠しました。
Bさんは2周期目。
Cさんに至っては7周期目にやっと妊娠・出産に至りました。

BさんやCさんの妊娠しなかった周期は、潜在妊娠や着床不全のいずれかである可能性があります。
そうすると、AさんよりBさん、BさんよりCさんの方が染色体異常の受精卵ができる確率が高い、ということになりますね。

これを裏付ける事実として、妊娠を試みている女性に生理一日目に妊娠検査をしてもらうと、3-5%の人が気が付かないけれど妊娠している、というデータがあります。

不妊治療を受けるか考える時期について

というわけで、妊娠するまで時間がかかる場合は、前回お話したように不妊症である可能性が高いばかりでなく、卵子の力が落ちて受精卵の染色体異常が起きやすくなっている可能性も考えなければならない訳ですね。
一人目ができるまでに時間がかかった場合は、次の妊娠ではさらに受精卵の染色体異常の割合が増えて確率が下がってしまう場合があり、早めに子作りや治療を受ける必要があるかもしれません。

余談ですが、もし受精したかどうかを採血して調べることができれば、不妊症の原因もずいぶんわかりやすくなると思われませんか?

いつも受精しているのになかなか妊娠反応が出なければ、受精卵の染色体異常が多くなっている可能性があり、体外受精をしてもしなくても妊娠する可能性はあまり変わらないかもしれません。

この場合根気よくタイミングを取るか、場合によっては子宮側に原因があるかもしれないことを考えます。
逆にいつも受精が起こっていなければ、体外受精さえすればすぐできるかもしれない、と考えることができます。

血液検査で不妊症の原因がわかる時代が来る?

1980年代に、受精後しばらくすると血液の中の免疫状態が変わることがわかって、何か免疫に関係した物質の量に変化があるのでは、と言われたことがありました(実際、妊娠したときには排卵してから3-4日でわかる、というお母さんもいらっしゃいます)。

Early Prenancy Factor(超早期妊娠因子)という名前が付けられたこの幻の物質を、当時畜産、実験動物も含めて世界中の多くの研究者が競って探そうとしましたが、残念ながら今に至るまでこれだ、という物質は見つかっていません。

現在では、一つの物質ではなく、多くの人である方向に免疫の状態が変わるのでは、と考えられているようです。

将来このような物質、あるいは受精したかどうかわかる検査が発見されれば、どうして妊娠できないか悩むご夫婦もすくなくなるかもしれません。

Sato T, et al. Hum Reprod. 2019

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