第15回 知りたい!Noah ART Clinicの培養室ってどんなところ?
こんにちは!
培養士の川島です。
今日はNoah ART Clinic武蔵小杉の培養室について特徴も含め分かりやすく解説していきたいと思います。
卵を預けているものの、普段見る機会もない培養室です。
「どんな所で培養してるの?」
「他の施設とどう違うの?」
今回はこんな疑問にお答えしていきます!
Noah ART Clinic培養室の特徴
環境の変化を抑えた卵に培養室
卵子は体内から出ると環境の変化によるダメージを受けてしまいます。
そのため、当培養室では ”卵子が取れた瞬間から環境の変化を抑える” 工夫をしています。
スマートステーションで卵子へのダメージを減らす
ダメージを抑えるために大切なことは採卵で卵子を探す時から温度、CO2濃度を最適な状態に保つことです。
そのため当培養室では「スマートステーション」を採卵時から使用して卵子を探すようにしています。
スマートステーションは保育器を改変したような機械で、導入している施設は少ないのではないかと思われます。
スマートステーションがない場合、管理できるのは温度のみですが、
当院ではこちらを使用することで無菌操作や温度だけでなく、大気中のCO2濃度も常に管理することで卵へのストレスをより小さくした作業が行えるようになりました。
タイムラプスモニタリングシステムで培養中の受精卵へのストレスを減らす
培養庫から外に出す操作だけでも卵はストレスを受けてしまいます。
「受精卵は培養庫に入れたらなるべく外に出したくない」
「培養庫内で観察できないかな」
それを可能にしたのがこのタイムラプスモニタリングシステムです。
受精卵を外に出すことなく観察できるのはもちろん、胚培養士が見ていない時でも動画のように受精卵の状態を記録することが可能になりました。
学会や論文でも、タイムラプスで培養すると受精卵の発育も向上することが報告されています。
また、最近では世界中の受精卵のデータを集めたAIが搭載されました。
AIにより妊娠しやすい受精卵を独自にスコアリングすることができます。
そのため当院ではタイムラプスで培養している方に限り、AIと胚培養士の2つの目で受精卵の評価をしています。
IMSIを使用して良好な精子を確実に顕微授精すること
通常の顕微授精(ICSI)だと400倍までしか拡大して精子を見ることができません。
400倍だと精子の形態や動きを見るためには不十分です。
そのため、当院では1200倍で精子が見える特殊な顕微授精システム
Intracytoplasmic Morphologically Selected Sperm Injection(IMSI)を使用して顕微授精を行っています。
以前のIMSIや顕微授精についての記事はこちら↓
実際に一般的なICSI(左)とIMSI(右)の見え方を比較してみます。
左の見え方で良好な形態の精子を探して顕微授精を行うことの難しさがなんとなく分かると思います。
当院ではIMSIで良好な精子をしっかりと選択するするようにしてから、受精率や胚盤胞で凍結できる確率が上昇しました。
まとめ
今回の記事では当院培養室の特徴として3つのことを説明してきました。
①採卵直後から卵へのストレスを減らす工夫をしている
②タイムラプスモニタリングシステムを利用した胚の評価を行っている
③IMSIにより精子の選択に力入れている
これら以外にも論文や学会発表を通して効果的な技術の取り入れも随時行うことで、クリニックのアップデートも欠かさず行っています!
またコラムでも有用な情報を発信していきますので今後もご期待ください!!